先日個展のときに「ガラスや金属の質感がきれいに表現されていますが、どうやって描いているのですか?」という質問がたくさんあったので、今回は鏡面金属の描き方を説明します。
描き方というよりも「なぜ鏡面の金属はそうゆうふうに見えるか」の説明なので、デジタル画材だけでなく透明水彩や鉛筆デッサンにも応用できます。
こちらの絵はM.C.エッシャーの「Three Spheres II」に習ってPhotoshopでデッサンしたものです。(エッシャーのオリジナル画像はこちら。公式サイトはこちら。)
左から透明球、鏡面金属球、白色球になっています。 真ん中の鏡面金属球には左右にある2つの球がきれいに写り込んでいます。
よく見るとそれ以外にも描いている本人やPCのモニターや窓が写り込んでいるのがわかります。
鏡面金属は表面が平滑なので、入ってきた光が同じ角度で反射されます。このことを正反射といいます。
光源以外の弱い光(壁や床などに反射した光)でも正反射するため、モチーフの置かれた環境が写りこみます。
このため同じ鏡面の金属の物体でも違う場所に置くと全く違って見えます。
これが鏡面金属は描くのがむずかしいモチーフといわれる理由です。
鏡面金属をうまく描くにはモチーフそのものよりも、置かれた環境のほうをよく観察します。(モチーフよりも環境の方が断然大きく観察しやすいですからね)
モチーフに置かれた環境の何が写りこんでいるが分かると断然描きやすくなります。また視点を動かすと写り込みが変化するため、視点を固定すると描きやすくなります。
つまり鏡面金属を描くコツはモチーフを描くのではなく、環境を描きます。
私は金属やガラスのモチーフが好きでよく描きますが、それはモチーフだけでなく同時に空間も描いていると考えています。 目の前にある小さなガラスビンや金属の球に空間の広がりを感じます。
次回に続きます。